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 明日更新するとか言って、かなりギリギリに書き終えた駄目管理人はどこのどいつですか。私ですYO!!
 
…こんな管理人ですが、こんにちは。

 今回の敗因は、少しでもカプ要素を入れようとしたこと。吃驚するほど薄っすらですが。

 
以下、短編小説、薬売り+抜刀後の人(世にいうハイパーもしくはウェンツさん)
     薄っすらハイパー×薬売り(笑)


 
 その瞬間、2人の心のうちの言葉が重なった。
 曰く、
(…モノノ怪の仕業、か?)
と。
 
それはなんとも、彼等らしい感想だった。
 
 
 
 しろいせかいに ぽかりとうかぶ はなふたつ
 
 
 
白い男は考える。
自分は何故ここに居るのかと。
久々に野宿とおさらばできた今夜は、質素だが手入れの行き届いた宿の一室で一人、上弦の月を肴に酒を楽しんでいたはずだ。幻覚を見るほど呑んだ憶えはとんとない。
が、事実、瞬き一つの間に、このどこまでも白い場所に自分はいた。比喩でもなんでもなく、本当に瞬きをした瞬間―眼を閉じ開くという無意識の動作を終えると、先程まで闇のなか皓々と照っていた半円は消えうせていた。いや、月が消えたというよりは、地上に月が落ちてきたせいで周りの闇の方が見えなくなったのではないかと、錯覚するほどに、眼前にはただ“しろ”の世界が広がっている。
これが幻覚ではなく、何だというのか。夢でも見ているというのならば、俺は瞬き一つの間に眠りこけてしまったことになる。そんな間抜けな事態だとは、正直思いたくもない。狐に化かされていた方がまだマシだ。
 
目の前は白。
足元も白。
頭上も白。
左も白。
逆も白。
後ろも白、と…
 
……おや?
 
振り向いた先にいたのは、この世界に溶け込みそうな色彩の髪をもつくせに、決して混ざらない色をも身に纏うが故、世界に溶け損ねたかのような男が一人。
ここでようやく、白い男―薬売りは自分の半身とも呼べる、黒い男の存在に気がついた。
 
 
 
 
黒い男は考える。
白い男が何故ここに在るのかと。
現(うつつ)に出現する時以外に過ごす“ここ”は、何も存在しない、それこそ己ですら存在するのかどうか判らない、そんな空間。……そんな空間だった、はず。
が、気がつけば、目の前に見慣れた(けれど“ここ”では見た事がないほど鮮やかな)色、形。突然の出来事に思考がついていけず、全ての機能が一瞬、完全停止した。
現世に呼ばれた訳でも、出た訳でもない。ただ、眠る様にたゆたっていただけだ。何故それが突如目の前に現れたか見当もつかない。
 
それは此方に背を向け、前を向いている。
それから下を見て。
上を見上げ。
顔を左に。
次は右。
くるりと、着物の裾を翻し…
 
ぱちり、と。
 
振り返った男と眼が、合う。この世界に溶け込みそうな白い肌の持ち主は、しかし、いつもの派手な紋様のひろがる浅葱色の着物をきっちりと身に纏っているが為に、溶けあうことはなく。現の空を透かし込んだようなその男の目に、自分の姿が浮かんでいる様さえよく見える。
ここでようやく、黒い男―退魔の剣の使い手である男は、自分が“ここ”に確かに存在しているのだと気がついた。
 
 
 
 
 
 そうして、共に感情をあまり面に出さない性質の持ち主のため、浮世離れした男2人が真顔でじっと、それこそ睨む様に見つめ合っているという、一種奇妙ともいえる光景がそこにできあがった。
 

 
さて、先に落ち着いたのは、どうやら薬売りの方だった。なにせ、こうした不可思議な現象に直面することが多いのは彼なのだ。モノノ怪の真や理を知る上で、過去の記憶の世界やら異空間やらにとばされたことも一度や二度ではない。加えて、モノノ怪などの気配もせず危険も感じないこの空間にいても、それほど問題ではないと判断したようだ。
 
「…しかし、ここは何処なんでしょう、ね…」
『ここは“ここ”だが』
 
 
ポツリと漏らした言葉に、わざわざ返事をするのはいかにもその男らしかったのだが、如何せん、常にも増して意味がわからない返事がかえってきた。どうやら、こちらの方はまだ、混乱から立ち直れていない様子である。
逆に、すっかり何時もの調子を取り戻していた薬売りは、なんとなく、といった具合ではあったが事の有様を理解しつつあった。
確信を得る為に、(やはり未だ頭の何処かが停止状態にある様子の)男に問いかけてみる。
 
「もしかして“ここ”は、貴方が何時もいる場所とか、ですかね?」
『そうだ』
「で、そこに私が突然現れた、と?」
『ああ』
 
なるほど、と呟いて薬売りは今一度、頭上を仰ぐ。
“ここ”はどうやら、もう一人の自分の居場所らしい。記憶には無いが、彼が自分の代わりとして現に出ている際、もしかしたら己もここにいるのかもしれない。
どうやって“ここ”に来たのかは知らないが、目の前の相手も近頃、摂理を無視して勝手に現に出てくるのだから、逆も不可能とは言えないだろう。
自分の姿を改めて見てみると、着替えたはずの白の夜着のかわりに、普段身に着けている浅葱の着物を纏っている。と、すれば、実体でこちらに来たというわけではなく、意識だけがここに在るような状態なのだろう。
 
(夢のようなもの、か)
 
しかし、ここがどこだか理解したところで戻れるものでもないらしく、薬売りは依然として白の空間に存在している。
そこで、解決の手がかりをもっていそうな男に、薬売りは再び尋ねてみることにした。
 
「質問、なんですがね」
『?ああ』
「貴方が現に出るとき―あぁ、剣によって出るとき以外、ですよ?
どうやって、ここから出るんですか?」
『…出たいと思って出るだけだが』
 
 答えになっていない。
 
「……つまり、特に具体的な方法はない、と?」
『ああ』
「……ちなみに、この空間に戻る時は?」
『同じだ。戻ろうと思えば、戻れる』
 
残念なことに(ある意味予想通りだが)、男の返答はまったく参考になりそうになかった。薬売りが、おもわず低く唸ってしまったのも無理はない。試しにと目をつぶり、心のなかで戻るよう念じてみたが、やはり見まわせども周りは白のまま。

 (…面倒くさい…)
もういっそのこと自力で帰るのは諦めて、自然に現へ戻るのを待つか、と半ば自棄にさえなっていた薬売りだったが、視線を感じて男に向き直ると、案の定、こちらをじっとみている。薬売りと会話をしている内に大分落ち着いたようで、なんですか、と薬売りが問うより早く男の方が口を開いた。
 
『お前こそ、どうやって此方に来た』
「どうやって、ですか?」
 
こちらの方が聞きたいぐらいだ、と続けようとして、視界に掠めたものに、ふと、思い出したことがあった。
 
 
 
風の気配などない空間なのに、今も波打つようにみえる『それ』。
さらさら さらさら、と音さえ聴こえてきそうだ。
 
自分がもつものとは明らかに質が異なると思う『それ』は、真白。
齢を経た末の白とは違い、きらきら きらきら、と。
 
何かに似ている、と思ったのはつい先程。
 
 

 
「…なるほど…そういうこと、か…」
 
その言葉に怪訝な表情を向ける男に、薬売りは一歩近付く。
 
「いや、ね。あちらではちょうど、月が出る刻限でして。月見をしながら一杯飲んでいたんですが…酒は以前、客に貰った物でしたっけね。なかなか、美味でしたよ」
 
 男は黙って薬売りの話を聞いていた。
 もう一歩、薬売りが歩み寄ったため、元々あまりなかった二人の間の距離はもう殆どなく、触れ合いそうな程だ。
 そこでぴたりと足を止め、
 
「まぁ、そんな訳で月を見ていたら、思い出してしまったんですよ」
 
これを、と言って薬売りが手にしたのは、一房の白い髪。
その言葉と行動に驚いている男に構わず、「やっぱり見た目どおり、さらさらなんですね」等と感嘆しながら前に垂れている髪に何度も指を通す薬売り。なにやらご機嫌だ。
 
『…何故、月を見て俺の髪なんぞ思い出したんだ』
「え、似てませんか?」
 
見事な月光色だと思うんですがねぇ、と未だに髪を指で梳きながらいう薬売りを、なんとも言いがたい顔でみていた男だが、止めようとはしなかった。それが、髪を梳いてもらう感覚が思いの外気持ちよかった為なのか、なにか別の理由がある為なのかは男自身、わかっていなかったようだが。
男は目を閉じ、しばらく薬売りの好きなようにさせていたが、彼がついで、と言わんばかりに発した言葉にカッと音がしそうな勢いで紅玉の瞳を見開いた。
 
だが、そこにはもう、ただ白い世界が広がるだけだった。
 
 
 
 
 
 
「…戻れたみたい、ですね…」
なんとも急に戻れたのは、あちらの世界に行ってしまった理由がわかったからだろうか。
右手を持ち上げ、感覚を確かめるように数度握ってみる。左手には月光色の髪のかわりに、空になった小振りの杯。着ているのは白い夜着。頭上に輝く月の位置からして、さほど時は経っていないようだ。
上弦の月をみて、ふ、と一つ、口元に笑みをのせると、薬売りは寄り掛かっていた大きな箱から、自分の持っているものと同じ朱塗りの杯を取り出した。
ことんと、それを自分の座している対面の位置に置き、仄かに甘い香りのする酒を注ぐ。己の盃にも同様に酒を満たしてから、夜空を仰いだ。
 
薬売りの醒めるような美しい青の眼と、床に置かれた朱色の小池に、丁度半分に欠けた月だけが静かに浮かんでいた。
 
 
 
 
おんなじ もの

「で、会いたいと思ったから、此方に来ちまったんでしょうね」
それは、摂理を無視してまで現に出てくる、どこぞの男と同じ想い(もの)



追記>
 微妙に以前書いた『いろイロ』にリンクしていたりします。
 薬売りさんが白い世界で最後に言った台詞、自覚症状ありなのか天然なのかによって、意味が異なりますね。お友だちに会いたい感覚で言ったのなら、どこぞの男が可哀想な展開が期待できます!(何度も言いますがハイパーさん、大好きですよ?)
 捉え方は人それぞれ、ということで。お好きな意味で解釈して下さい('-'*)
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 そのため、ブログも主人公総受け傾向になる予定。
 
 現在、薬売りさんに愛が偏り中。

 
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