胡蝶語り 第一章 双汝之歌～序の幕～

　いよいよ始めてしまったパラレル小説・胡蝶語り。
　かなり特異なお話しなので、カテゴリー『怪・モノノ怪パラレル小説：胡蝶語りについて』をお読みの上、大丈夫！という方はお進み下さい。

人の世に　無数に転がる　物語
舞台は平安
始まりは闇のなか
謡うは迦陵頻伽

さてさて　皆々様　暫しの間　御付き合い願いたく

_{こちょうがたり}
胡蝶語り

ふたなのか
第一章　双汝之歌 ～序の幕～

くらいくらい　やみのなか

 

逃げなくては

ドコニ？

逃げろ逃げろ逃げろ

ドコヘ？

帰りたい還りたい返りたい

カエルトコロナンテ　ナイダロウ？

会いたい逢いたいあいたい

ダレニ？

助けてたすけてタスケテ

オマエヲ　ステタ　ヤツラナノニ？

五月蠅い煩いうるさい

ウケイレテ　クレルワケガ　ナイダロウ？

黙れだまれダマレ…ッ！！

オマエハ　モウ

 

バケモノニ　ナッテシマッタノダカラ

 

真っ赤に染まる　己の手

拡がる惨状　紅い海

「　う　ぁ゛　あ　ぁあア゛　あ゛ぁ　あ゛あ゛ァアアアア……ッッ！！」

ああ

自分は本当に

化け物になって　しまったのか

 

みさげた　さきは　ただ　あかく

 

 

「そんな格好でうろつくと、莫迦でなくとも風邪を引きますよ」

不意に落ちてきた闇は、ほんのりと温もりを伝え。

―黒染めの、衣？

「はじめまして、というのも可笑しいですが」

 

みあげた　さきは　ただ　あおく

 

「会いたかったですよ」

長く夜風に当たっていた事が窺える、その白く冷たい手は

「我が弟君」

けれど

ひどく　温かかった

 

 

第一章　双汝之歌(ふたなのか)　

初めて得た温もりは　ただただ　優しかった