小説：終焉の初音（しゅうえんのはつね）

　更新が滞らない様に、検索サイト様に登録しようかどうか、本気で悩んでいるチキンな管理人です。今日は。

　以下、薬売りさんが“人”であることを捨てたお話し。
　
　シリアスな薬売り＋抜刀後。ちょっぴり抜刀後→薬売り風味の短編。
　OK！な方は続きからどうぞ。　

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「あなたの血をくれませんかね」

　
　と、

　男は独特の笑みを、その藤色の紅をのせた口元に湛え、まるで世間話をするかのように言葉を紡いだ。

 

　
　己の紅で、全身を染め上げながら。

 

　　　　　終焉の

 

　知っていたのだ。

　己の半身だとしても、所謂、人外の者を　その身に宿す代償も。

　退魔の剣を、ただ人の身で扱うことの負担も。

 

　いつか、こんな時が来る事など、とうの昔に承知していた。

 

　ただ、それは

 

「こんなに早く、終わりがくるとは、ね」

 

　想像していたよりも、あまりに早く。

 

　思わず自嘲気味に呟いてしまう。

 

　ああ、粘つく錆びた鉄の味が気持ち悪い。

 

　「あなたの、血を」

　　―くれませんかね、と。

 

　岩肌が剥き出しの大地に、仰向けに寝転がったまま、その言葉を繰り返す。

 

　問われた男は、ただただ無表情のまま、此方を見下ろしていた。

 

　沈黙が続く。

 

　
　ああ、世界が霞む。

 

 

『戻れなく、なるぞ』

 

　それでもいいのかと、沈黙を破った男は言外に問うてくる。

 

　この男も、知っていたのだ。

　自分が人間であることを、望んでいた事実を。

　現世と己とを繋ぐ、唯一の鎖のそれに、しがみついていたのを。

 

　それでも

 

　「よこせ」

 

　まだ、死ねない。

　聴こえるのだから。

　モノノ怪の声が。叫びが。

　怨みが怒りが悲しみが嘆きが願い、が。

 

　―だからまだ、消える訳には　いかないのだ。

 

 

　途端、

　がりッッ　と

　いやに痛そうな音が、無音の世界に響いた。

 

　ああ、まだ音は聴こえるのか。

 

　「傷が、残りますよ」

　『遺るものか』

 

　何かを抑え込んだようなその声は、先程よりも近く。されど、男の表情は未だ見えず。

 

　なのに何故

　それは歪んでいるような気がしたのだろう。

 

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　初音

 

どくん　と、再び血が廻り出す音が聴こえる。

それは終わりの唄であり、始まりの唄でもあった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　



　人外の者であるハイパーさんの血を貰い、“人”ではなくなってしまった薬売りさん。
　ただの“ひと”が、退魔の力を使うことは、間接的だとしてもかなりの負担かと。滅するだけでなく、清め祓うのならば、なおのこと。
　我が家の薬売りさんは、ハイパーさんよりもモノノ怪に柵(しがらみ)がありそうです。
　ハイパーさんは人間のままでいさせてあげられなかったことを後悔する一方で、もう一人遺される心配がないことに安堵もしています。そんな自分が嫌だったりとかなり複雑な心情のもよう。
　薬売りさんがモノノ怪のことばかり考えているせいで、片思いっぽくなってしまう我が家のハイパーさん。

　……なんだろう、薬売りさん総受け主義なはずなのに、受けっぽい薬売りさんが全く書けない。
　と、いうか、私の中の薬売りさんのイメージが、恋愛事に詳しいくせに、全く興味がない為そこに自分をあてはめない男になっていく。(悩)