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短編を書こうとしたのに長くなり、かといって長編というには短い駄文投入。ちゅ、中編?ですかね??
短編と長編の狭間な駄文。
途中からあれ?逆じゃない?と思うほどハイパーさんはヘタレです。
(*彼は非常にかっこいい男前と思っています。私が言っても説得力ゼロですね、スミマセ…!)
以下、限りなく+の関係に近い 抜刀後×薬売り
『お前の見える空は何色だ』
「……は?」
ぽかんという表現がピッタリのその男の表情は、普段の何処か捉えどころの無い様とは異なり、ひどく人間くさかった。
あいにくと、木々の覆い茂るすっかり寂れてしまったこの道を好き好んで歩く者は滅多におらず、珍しいその姿を見れた“人間”はいなかったが。
いろイロ
――こちらの道を選んで正解だったな…。
危うく、人前で間抜け面を晒すところだった、と薬売りの男は胸の内で密かに安堵した。
それにしても…
薬売りはチラリと目線だけを後ろに滑らせる。
そこにいるのは、褐色の肌に金色を纏う、自分よりよほど浮世離れした男。
自分と似通った顔立ちの、けれど決して同じではない、“片割”ともいえるべき存在。
しかし、解き放った退魔の剣の使い手でもあるこの男、何故か最近、本来あるべき摂理を無視して、勝手に“この世”に出てくることがある。当初こそ、一体何事かと驚いていたが、今ではもう慣れてしまったほどだ。
今日も、いつの間にか現世に現れた男は、何をするわけでもなく、薬売りの数歩後ろを黙々とついて歩いていた。
現世に出てきたからといって何をするわけでもない。男の姿は徒人には見えない上、摂理をまげて出てきているのだから、当然退魔の剣が抜けるはずもなく。
ならば何故、わざわざ現に現れるのか。
己のうちでただ眠ることに厭いたのかもしれぬし、モノノ怪にしか関心が無かった彼が、外の世界に興味を抱き始めたのかもしれない。一度だけ問うてみたことがあるが、答えは『気紛れだ』の一言。
まぁ、なんにせよ、其は彼の人の自由であり、自分がどうこう言うものでもない。
… ない、の だが …
薬売りはようやく、くるりと身体ごと後ろを向き、豊かな白髪を風にあそばせる男と向き合った。
『………』
白髪の男もすでに、薬売りと同様に歩みを止めていた。感情のみえにくい眼で、ただじっと無言のままにこちらを見返している。おそらく、先程の質問と思われる言葉の返答を待っているのだろう。
今まで、何度も繰り返されたこの状況に頭痛すら覚える。
そう、なのだ。
目の前にいるこの男は、先の質問のような何を考えているのかさっぱり分からない言の葉を、急にポロリと漏らすのだ。そもそも、なにも考えていないのではないかと疑ってしまうほどだ。
さらに性質が悪いことに、それらは大抵の場合、微妙に自分に向けられたと判る質問の形をとっていて、聞き流すのもどうかと思ってしまい、また、無視をしたところであの眼でじっと見つめ続けられるのには変わりなく、居心地が悪いことこの上ない。
ならば、さっさと適当に答えてしまった方がよほど楽というものだ。
こういった訳が分からないことを、突拍子も無く言うのはどうにかならないだろうか…
薬売りはふぅ、と一つ、息を吐いてから、視線を男からその上―空へとずらした。
冬に向けて、色鮮やかに衣替えをした木々の隙間から見える空は、まさに秋晴れ。透き通るように澄んだ青に、秋の気配を感じる冷気を含んだ風が、白を運んでその様を変えていく。
先ほどまで、大して気にも留めていなかった空に思わず魅入り、ほぅ、と先程とは違う意味を持つ息が漏れる。
ふと、眼をおとすと、自分と同じく空へと目線を移している男の姿がみえた。これまた自分と同じく、どこか魅入っているようなその様子に、つと、笑みが漏れた。
その気配を察したのか、怪訝そうな眼を向けてくる男に「なんでもない」とは言ったものの、笑みはいまだ消えない。納得できず、どこか不機嫌になっていく彼に、さて、なんて答えたものか。
「たぶん、あなたがみえているのと、同じ色じゃあないですかね」
この空を見る者の数だけ、違う空の色が在るのだとしても。
二人とも、思わず魅入ってしまったのだから、今日の空の色は“同じ”でいいじゃないですか。
遅れて出した答えは、自分でもどこか的外れな気はしたが。
『そうか』
一瞬、キョトンと幼子のような顔をした男が、次には、ふぅわりと、その身纏う空気を和らげ、うすく笑んだようにみえた。
だから、だろうか。
いつもはここで途切れる会話を、
「で、なんでそんなこと、言い出したんですか」
少し続けてみようかと思ったのは。
『…………』
一瞬、男が息を呑んだ気がした。おや?と薬売りが、その紅色の眼を覗き込むと、答えを催促されていると思ったのか、男は漸う口を開いた。
『…お前の眼には、この空がどんな色に見えるのか気になったからだ』
「ほぅ。なんでまた、急にそんなことが気になったんで?」
ぐッ、と今度こそ言葉に詰まる気配がした。明らかに焦っているその男の様子は、見ようと思って見られるものではない。思えば、現世に現れた男の突拍子も無い言葉に、常ならば応えるだけで終いにしていた。その言葉の意味を問うたのは、初めてのこと。
ならば、常にない事態に自分の半身は戸惑っているとでもいうのだろうか?
だとすれば、
それは少しばかり…
「…おもしろい…」
思わずポツリと口にした言葉は、どうやら相手にも届いてしまったようで、ギッとその赤い目玉が此方を睨んでくる。人外のものですら竦ませるその眼光も、この状況ではただの照れ隠しかと思うと可笑しさが込み上げてくる。
「なにか、理由があるんでしょう?ぜひ、その理をお聞かせ願いたく候…」
あからさまにからかう態度でもう一度問えば、いかにも苦虫を噛み潰したかのような顔が目に映った。
ああ、おかしい
一方の薬売りはというと、もはやその笑みを隠すつもりもなく、藤色で飾られた口元を意地悪くつりあげ、ついにはクスクスと声まで漏れ出す始末。
それをムッとした顔でみていた―それがまた拗ねている様で薬売りの笑いを誘ったのだが―白髪の男は、これ以上からかわれては堪らないと思ってか、答えを言おうと口を開きかけ―結局、何も言わずに閉じた。
そして、なにやら考えはじめだしたようで、その顔は思案気なものへとかわる。
何故そこで考え始めるのか。
…まさかこの男、毎度毎度、本当に何も考えないでポロリと言葉を発しているのだろうか。
今までの疑いが真実に変わっていく様を薬売りが感じていると、思案に暮れていた紅玉がつい、とこちらに向けられた。
『お前の目玉と同じ色だったから』
ようやく出された答えは、しかしいまいち要領を得ない。薬売りが眼で続きを促すと、男は一言、一言、考えながら話しているのだろう。どこかゆっくりと話し出す。
『では、空と同じ色のその眼には、空が何色にみえるのかと思ったのだ』
「…おなじいろ、ですか…?」
薬売りは再び、澄んだ秋晴れの空を見遣った。
先程、見惚れていたどこまでも広がる美しい空と、自分の目玉が“おなじいろ”だと目の前の男は言うのだろうか。
「そいつぁちょいと、たとえが綺麗すぎやしませんかね…」
薬売りは、複雑そうな顔で、苦笑気味に呟いたのだが、それを聞いた男は心底不思議そうにのたまった。
『そうか?お前の眼はちょうど、この空をとかしこんだような色をしているが』
そこに、嘘の気配は全くみられず、薬売りは確かめるかのように、そぅっと自分の眼に片手をそえ。
「…ありがとう、ございます」
突然、礼を言われた事に少し首を傾げつつも、赤眼の男は『ああ』と律儀に返事をかえしてきた。
“これ”は確かに、自分にとって必要な大事なものだが、普段はあまり意識をしないものだ。相手は褒めるつもりではなく、ただなんとなく、色が似ているから“おなじ”だと言ったのだろうが。この美しい空に譬えられるのは少々申し訳ないが、決して悪い気はせず。
そこでふと、ならばこの男の目玉はどうだろうという疑問がくびをもたげた。
「夕日、ですかね」
『…なにがだ』
突如、薬売りが発した言葉に、途惑いながらもやはり律儀に男がかえす。なにやらいつもと立場が逆であるのが、治まっていた笑いを呼び起こす。「あぁ、大したことはないのですがね」と前置きをしてから、薬売りは応えた。
「あなたの眼は、何色かと思いまして」
『俺の…?』
「ええ。季節柄、紅葉なんかもいいと思ったんですが。どちらかといえば、“夕焼け”の方がしっくりくるな、と」
紅い眼球に、金の瞳孔。
空の支配者が、太陽から月へと移行する狭間。
世界を紅く燃え上げる、刹那的な美しさを夕焼けは持っている。
そう考えると、まさに目の前にいる男の眼にピッタリの表現だと我ながら思うのだ。
自分の答えをまとめて、すっかり満足していた薬売りは、男がなんともいえない表情をしていることに、ようやく気がついた。心なしか、目も少し泳いでいる。みると、顔や(見ているだけで寒々しい)着くずした衣から覗く金の目玉を模した様な模様までもが、キョロキョロと蠢いている。
―もしかして、照れているんですか、ね?
またもやイタズラ心が芽生えてきたが、さすがにこれ以上からかっては可哀想かと、ただその珍しい様子を観察するに止めておいた。
すると、落ち着いたのか、それとも居た堪れなくなったのか、紅眼も金眼も正常に近づいた頃になって、『そろそろ戻る』と告げてきた。
これもまた、珍しい。いつもはそれこそ、出てきた時と同様、何時の間にか消えているというのに。
ふいに、薬売りは、相手がこんなに珍しいなら、こちらも普段はあまりしないことをしてみようか、と思いたってしまった。
「どうせなら、今度は夕焼けの時分に来てくださいね」
『なぜ』
「あなたの眼には夕日がどんな色に映るか、お聞かせ願いたいから、ですよ」
約束、ですよ。と笑いながら告げると、男はなぜか、ピシリと動かなくなってしまった。
返事をするわけでもなく、かといって戻るわけでもなく、微動だにしない男を流石に訝しげに思った薬売りは「還らないんで?」と声をかけた。
とたん、ハッと此方に意識を戻した夕焼け色の持ち主は、自分の顔を隠すように片手で覆った。そして、ふいと薬売りから眼を逸らし、一言、『わかった』とだけつぶやいて、秋に色づく空気のなか、ざっと、とけるように姿を消した。
「…なん だったんで、しょうね…?」
道、ともいいがたい寂れた通りにおちる、葉の擦れる音が響く静寂の中。そこに佇む薬売りは、先程まで男がいた場所をいまだ訝しげな表情でみていた。
が、そのうちに、まぁ、あいつが変わっているのはいつものことか。と納得もした。
結局のところ、あの『わかった』は、約束に対してなのか、還らないのか尋ねたことに対しての返事なのかすらわからなかったが。
「本当に、なんだったんでしょうね」
思い起こせば、今日は随分と、珍しい姿がたくさん拝めた気がする。
たまには、こんな言葉遊びに興ずるのもいいかもしれない。
「さて、行きますかね」
おもった以上に話込んでしまったが、まだ太陽が輝く時間だ。こちらの道は酷く寂れている代わりに、次の町までの近道にもなっている。半身が持つ瞳の色に空が染まる前には、次の町に着けるだろう。
薬売りは、その眼と同じ色の空の下を、また一人、歩き始めた。
余談だが、いつもは何日かに一度しか現れない男が、その眼の色に空が染まる時分に再び現れたことにより、空色の眼の持ち主は冒頭と同じ表情を町中で晒すことになった。
(終幕)
実はこれでも削りまくったため、それをまとめるとウェンツver.ができたりします(笑)
ちなみにこの時点では、薬売りさんは恋心0%です。
ウェンツさんは、無意識に薬売りさんに恋心200%です。
……あれ?それって 抜刀後→薬売り じゃ……
ここまで読んで下さってありがとう御座います!!
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そのため、ブログも主人公総受け傾向になる予定。
現在、薬売りさんに愛が偏り中。